会社員の副業において会社設立すべきかどうか
こんにちは、税理士の定本です。 政府は会社員の副業を後押ししています。また、就業規則で副業を禁止している会社が徐々に減り、むしろ副業を推進する会社も一部で登場しています。 個人事業主と同様に副業している会社員が、その副業が軌道に乗ったと考えられるとき、会社設立すべきなのでしょうか? 副業で会社設立するといろいろ面倒なことも起きそうですが、会社設立をどうすべきか今回探ってみましょう。 | ![]() |
会社設立は登記でバレる可能性あり
副業する際に良く言われるのは「住民税でバレるので、副業分は確定申告時に『自分で納付』(普通徴収)を選択する」というものです。
副業分の住民税を「特別徴収」にすると、会社の給料から天引きとなるので、そこで人事に気付かれてしまうというものです。副業OKの会社ならばそれでも良いのですが、副業NGの会社でバレるとペナルティを受ける可能性があります。ここについて深堀りしません。
個人事業主ならば『自分で納付』を選択すれば、自分で話したり、WEB検索で副業と名前が引っかかったりしない限り会社を設立すると、法務局に登記するので、商業登記簿謄本でバレる可能性があります。
本名で登記簿は検索できませんが、会社の住所(本社)を自宅にしていると、第三者が住所で見つけて、密告(通報)する可能性もあります。
副業についてご自身のスタンスや会社への報告、覚悟などを踏まえて、それがはっきりしている前提で考えていきます。
個人事業主として継続するのと会社設立の比較
副業している会社員が会社設立することは義務ではありません。副業を会社設立(法人化)することと個人事業主で続けるのでは条件面で以下のような違いがあります。
事業主体 | 会社設立 | 個人事業主 |
所得税 | 代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45% | 事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45% |
個人住民税 | 代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10% | 事業の売上から「事業所得」を算出してその約10% |
消費税 | 2年間は支払い義務がない特例もあり(インボイス制度の免税事業者になる) | 免税事業者にならない限り支払う。免税事業者にはデメリットもあり |
法人税 | かかる(15%~23.2%) | なし |
法人住民税 | かかる | なし |
法人事業税 | かかる | なし |
個人事業税 | なし | かかる |
会社設立の分岐点は副業の年間売上です。
個人事業主 所得税 | 会社 法人税 | |
課税される所得金額 | 税率 | |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 一律23.2% 一部中小企業法人は課税所得800万円まで15%、超えた部分は23.2% |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | |
40,000,000円 以上 | 45% |
ざっくり「売上-経費」が800万円を超えるくらい見込めるなら、会社設立した方が納税額は少なくなります。副業の売上が数百万円程度であれば、会社設立せず個人事業主として続けた方が良く、毎月数万~10万円くらいのお小遣い稼ぎならば、会社設立は不要です。
もちろん、「売上-経費」が20万円を超えた場合は、確定申告が必要になります。
消費税については年間売上1000万円を超えるなら会社設立(法人化)して、2期分の免除を勝ち取るのがかつての定石でしたが、インボイス制度導入でそれ以下の売上でも課税事業者になる判断をする事業者も増えました。その点はぜひお含みおきください。
会社設立のメリットとデメリット
会社設立は主に所得にかかる税金(所得税or法人税)の税率の違いが狙いです。所得が増えれば個人事業主の所得税よりも会社設立して法人税を支払った方が税負担は下がることになり、節税につながります。
しかしそれ以外にもメリットがあり、また会社設立するゆえのデメリットもあります。副業で会社設立、個人事業主のまま、それぞれのメリットとデメリットについて表にまとめました。
会社設立 | 個人事業主 |
メリット | |
社会的信用がある(商業登記簿謄本の取得) | 簡単に開業できる |
経費の範囲が広い | 定款などの作成義務がない |
責任の範囲が有限 | 自由な働き方ができる |
赤字繰り越しが10年である | 廃業手続きもすぐにできる |
利益次第で個人事業主よりも税率が下がる可能性 | 社会保険に加入できないため、国民健康保険と国民年金では老後が不安 |
最高税率が23.2%と所得税の約半分 | |
デメリット | |
設立までの手間がかかる | 社会的信用がやや低い |
設立後の帳票作成や法人会計、税務申告が大変 | 最大税率45%と法人税よりはるかに高い |
赤字でも法人住民税(均等割)がかかる | 無限責任で経営失敗のマイナスはすべて自分が負う |
社会保険へ加入しなければならない | 赤字繰り越しが3年までしかできない |
会社の廃業手続きが煩雑 | 経費で落とせる範囲が狭い |
商業登記簿謄本で事業がバレる |
基本は所得にかかる税率で副業の会社設立を判断していただくことになりますが、それ以外にも社会的な信用なども重要です。
なお、会社設立した場合、90%を超える会社が顧問税理士をつけていると言われています。個人事業主のように自分で確定申告することは稀で、税理士のチェックが必要です。会社設立して法人化した方が税務調査に入られやすいという話もあるようです。
基本は副業の売上や所得で会社設立を判断し他の要素も加味しよう
副業が会社公認ならば正々堂々、売上や所得から税率を判断し、節税になるなら会社設立しても良いでしょう。
会社に黙って副業している場合、会社設立することでバレるリスクが上がります。会社設立で節税が求められる場面であれば、もはは副業ではなく本業かもしれません。
「所得税<法人税」ならば個人事業主としてそのまま継続。「所得税≧法人税」になった場合に、会社にバレるリスクや法人会計のコストをどのように考えるか、会社設立は義務ではありません。
売上が約1000万円、所得が700万円~800万円になったときに会社設立について考えるというスタンスで良いと思われます。
いかがでしたか。
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